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2024.09.10

育児の役割分担は?手の抜き方は?出産を控えた夫婦が岡山県の新事業「子育て家庭留学」を体験【岡山】

結婚や子育てなど、将来に不安を抱える若者の助けになればと岡山県が新たに始めた事業、「子育て家庭留学」。その留学先は、未就学児を育てる家庭です。一体、どんな留学なのか、取材しました。

「こんにちは。きょうは宜しくお願いします」

荒木さん夫婦は11月に第一子が誕生予定。この日、岡山市北区の家庭を訪ねました。この家は、7歳と4歳の子育て真っただ中。荒木さん夫婦の「子育て家庭留学」がスタートしました。

岡山県が2024年7月から、新たに始めた事業、「子育て家庭留学」。若者が県内の子育て家庭を訪問し、先輩パパ・ママや子供との交流を通じて、将来について考えてもらう体験型プログラムです。参加費は無料で、対象は県内の20、30代の若者、大学生でもOKです。受け入れ側は主に未就学児を育てる家庭です。

(留学に参加した 荒木駿斗さん)
「子育てをしている男性が(身近に)あまりいなくて、お父さんの立場からどうやって子育てをしているのか、普段子供とどういう生活をしているのか聞きたくて今回応募した」

荒木さん夫婦は、夫の駿斗さん(30)が育休取得を検討中。子育て家庭留学を通して知りたかったことは…
「身近に子育て中の人がいない…。育休や時短勤務の体験談を聞きたい」

一方、出産後も仕事を続ける予定の妻・加苗さん(30)は…
「性格上、育児や家事を頑張りすぎてしまうかも。手の抜き方を知りたい」

「子育て家庭留学」では、こうした希望を聞き取り、県が参加者と受け入れ側をマッチングします。今回の受け入れ先では、夫が1年間の育休を取得。その後、時短勤務も経験しました。

荒木さん夫婦は、育児の役割分担について熱心に聞きます。

Q:子供が生まれたばかりのころ、夜のミルクやおむつ替えやお風呂は夫婦でどのように分担していた?
A「産む、授乳以外、女性にしかできないこと以外は、基本的に男ができないことは何もない」

Q「おっぱいだけは私があげて、隣のリビングで主人がオルゴールの曲を流しながらずっとあやしていた」
A「ミルク係と、寝かしつけ係で分担するのは良いね」

県がこうした事業に取り組むのは、深刻な少子化のためです。

合計特殊出生率の推移。岡山県は2023年、1.32で過去最低になりました。出生数は1万1575人で、12年連続で過去最少を更新しています。

(岡山県子ども未来課 野隆昌副参事)
「(合計特殊出生率の要因は)晩婚化・晩産化などさまざまな要因が複雑に絡み合って、数字に表れているのでは」

岡山県では、男性の4人に1人、女性の6人に1人が生涯、未婚。平均初婚年齢も男性30.1歳、女性29歳と年々高くなっています。共働きが当たり前の今、働きながら育児ができるのか?環境面や制度への不安も少子化の背景にあるのではとみられています。

(岡山県子ども未来課 野村隆昌副参事)
「子供の教育や子育てにお金がかかるということが大きな理由としてある。それ以外にも仕事と子育ての両立ができるのかという不安や、子育てに自信がないという不安が県民意識調査の結果に表れている」

留学の途中には、子供たちを交えて交流する時間も。

Q:手の抜き方は?
A「産後ケア入院を助産院でして、1週間以上泊まった。2人目のときもした」

「うちも産後ケア入院は有力な選択肢だね」

出産を控えた荒木さん夫婦は、産後のケアについても質問。約2時間の留学の中で、育児や家事の分担、育休中の過ごし方など普段、聞くことができない現場のリアルを知ることができたようです。

(荒木駿斗さん)
「生の声、直近で子育てをしている実際の声を、じっくりと時間をとって聞くことができたのが一番大きい」

(荒木加苗さん)
「明るい家庭、温かい家庭が良い。いろいろな人にありがとうと言える子供にしていきたい」

(子育て家庭留学を受け入れ 坪井和佳奈さん)
「一番大事なのは、夫婦が話し合って、最善の形を作っていくこと。これから先どんな子育てをしていきたいか、どんな家庭を築いていきたいか、自分たちがどんな生活をしたいか、きちんと話し合っていくことが大切。それが(留学を通じて)伝われば」

(岡山県子ども未来課 野村隆昌副参事)
「若い人が結婚や子育てを考える機会が少ない。そういう環境作りを進めていく必要があると考えている。リアルな現場で得られる学びや気付きは大きいと思うので、将来設計をするヒントを得てもらえたら」

結婚や育児に対する不安解消を目指す「子育て家庭留学」。少子化に歯止めをかける一手となるか注目です。

OHKがアプリで行ったアンケートで結婚や子育ての不安について聞いたところ、「ある」または「あった」と回答した人が53.3%(回答期間:9月3日~8日 有効回答数439)と半数以上を占めました。主な理由として「仕事をしながらきちんと子供と向き合えるか」など共働きならではの不安も挙げられました。

今回の家庭留学のように実態を知ることはもちろん大事ですが、安心して子育てできる制度の充実や社会の理解が欠かせません。