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1日の平均利用者62人の区間をどうする JR芸備線のあり方話し合う協議会…今後は【岡山】

2025.02.14

1日の平均利用者62人の区間をどうする JR芸備線のあり方話し合う協議会…今後は【岡山】

深刻な赤字となっているJR芸備線の今後を議論する再構築協議会です。新しい法律に基づき全国で初めて設置されて、3月で1年となるのを前に、今後の議論の行方を考えます。

(JR西日本広島支社 広岡研二支社長)
「地域のまちづくりに合わせた今より便利で持続可能性の高い交通体系の実現に向けた議論をしたい」

2024年3月26日、広島市で開かれた1回目の全体会合。JR西日本から要請を受け、参加者の目には緊張の色が浮かびました。全国でローカル鉄道の赤字が問題となる中、2023年に改正された法律に基づいて設置される再構築協議会。国が行司役となり、鉄道事業者と沿線自治体が路線の今後を議論し、設置から3年を目安に結論を出します。

全国で初めて白羽の矢が立ったのが、中国山地の谷間を縫うように走って新見市と広島市を結ぶJR芸備線です。その中で対象となるのが、備中神代から備後庄原までの約70キロ。人口約2万5000人の新見市と人口約3万人の広島県庄原市を結ぶ区間です。

この区間には16の駅がありますが、1日の利用者は2023年度、備中神代で9人、最も多い備後庄原で134人、利用者が0だった駅は3つありました。この区間の平均の利用者は1日62人、費用に対する収入の割合を示す収支率はわずか2.9%でした。

国は優先的に再構築協議会の対象となる路線を1日の利用者が1000人未満という目安を示していますが、62人のこの区間は深刻な数字です。

(前川裕喜記者)
「経営的には厳しい路線です。これまで全体の会合が2回、実務者レベルの会合が4回開かれましたが廃止にするか存続させるか方向性は出ておらず議論は停滞気味になっています」

再構築協議会を構成するのは、国の出先機関の中国運輸局、JR西日本、沿線の岡山県、広島県、新見市、庄原市など。これまでの主な主張を見ていきます。

(広島県 玉井優子副知事)
「内部補助でローカル線の維持が難しくなったと発言していたが、今年度の業績予想は連結経常利益が1460億円で大きく伸びている。こうした経営状況を踏まえてなぜ維持できないのか説明してほしい」

黒字路線で赤字路線をカバーする「内部補助」という考え。JRには、1987年に国鉄から民営化後も、公共性を考慮してそうした責任があるとされています。これに対しJR西日本は、芸備線は、大量輸送という鉄道の特性を発揮できていないとして、地域にとって最適な交通体系の構築を求めるなど、意見は平行線をたどっています。

また、広島県は国が全体の交通ネットワークの考え方を示していない中、芸備線の議論だけが先行しているとして疑問を呈しています。

これに対し中国運輸局は、再構築協議会の制度上、全国の交通ネットワークのことではなく芸備線について議論する場であると指摘。交通ネットワークに対する考えはあいまいなままです。

一方、岡山県は、さらなるデータ収集の必要性を求めました。

(岡山県 上坊勝則副知事)
「全てのデータを公開で説明してもらえなかった。透明性のある議論をすることになっているので協議の前提として改めて公の場で説明してほしい」

現在、再構築協議会は、沿線住民や来訪者にアンケートなどを行い、芸備線の経済効果などを調査しています。こうしたデータに基づき、2025年4月以降、バスなど二次交通とどう連携できるか実証事業を行って路線の可能性を探るとしています。

この1年の推移について、赤字ローカル鉄道に詳しい島根大学の関耕平教授は次のように見ています。

(島根大学法文学部 関耕平教授)
「印象としても停滞と言わざるを得ない」

関教授が見てきたのが赤字を理由にJR西日本が2018年に廃止したJR三江線です。広島と島根を結んでいましたが、沿線地域では現在、送迎の負担増加などの問題となっていて、公共インフラとして鉄道の価値を考える事例となっています。再構築協議会の議論が停滞する背景には、国が鉄道の価値を示していないことに問題があるといいます。

(島根大学法文学部 関耕平教授)
「国がJRと自治体の間で出てきて行司役を行っている枠組みが問題で議論の停滞の背景。赤字ローカル線は国の施策上どう位置付けるかこのことがはっきりしないと赤字だから廃止ということになる」

設置から3年を目安に結論を出そうと、走り続ける再構築協議会。関教授は、これから自治体側にもできることがあると言います。

(島根大学法文学部 関耕平教授)
「三江線の廃止の時、沿線住民はあきらめムードだった。例えば三江線の沿線の状況や教訓、影響を自治体として科学的に明らかにしながらローカル鉄道の価値が失われることの重大さを沿線住民と世論形成して積極的な議論をしていくことが求められる」

(前川裕喜記者)
「全国で初めての設置となった再構築協議会。限られた地域のことではなく全国的なインフラの問題として改めて考える必要があります。そして、どういう結論になったとしても地域に後悔が残らないよう建設的な議論が求められます」

再構築協議会は3月末までに3回目の全体会合が開かれ、4月以降の具体的な動きが決まるということです。