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2022.11.01

聴覚障害者の命を災害から守りたい 新しいアプリで緊急案件を知らせる…開発本格化【岡山】

岡山大学病院の医師が、聴覚障害者の命を災害などから守ろうと、直接、音の情報を届ける新しい機器の開発に取り組んでいます。3年後の完成に向けてプロジェクトは本格化し、期待も高まっています。

10月、東京を訪れたのは、岡山大学病院耳鼻咽喉科の医師、片岡祐子さんです。

(岡山大学病院耳鼻咽喉科 片岡祐子医師)
「きょうは開発の打ち合わせ、前に向けて進めるところ」
岡大 片岡医師01
片岡さんは、9月、岡山大学病院に開設された聴覚障害者の支援を専門に行う施設、「聴覚支援センター」の実務担当者です。

これまで、聴覚障害のある子供たちの声を聞き取り、学校で必要な配慮をまとめた冊子を作り配布するなど、聴覚障害者への理解を求めて活動を続けてきました。
岡大 片岡医師02
片岡さんが今、大きな目標にしているのが、災害時に聴覚障害者の命を守るための新しい機器の開発です。

(岡山大学病院耳鼻咽喉科 片岡祐子医師)
「何かを作り出すことで、教育でも世の中に還元できて、難聴者の役に立てばいい」
岡大 片岡医師03
技術開発を担うのは、大手電機メーカー富士通です。

(富士通 Ontennaプロジェクトリーダー 本多達也さん(写真中央))
「大きい声出すと、強めに振動して、小さいと小さく…。音の強弱が分かる」
岡大 片岡医師04
「ボタンを押すと押した瞬間に振動するので、みんなでリズムを合わせたり太鼓をたたく時ダンス踊る時に一緒にリズムをとれたり…」
岡大 片岡医師05
本多さんは、全国の聾学校で活用されている「Ontenna・オンテナ」という機器の開発者。
岡大 片岡医師06
「オンテナ」は、音の強弱を振動で知らせるもので、リズムをとったり、みんなでタイミングを合わせる時などに使われています。
岡大 片岡医師07今回の開発では、オンテナの技術を進化させ、新しい機器を作り出します。

(情報技術開発 AI&データマネジメント推進部 日吉顕太さん)
「救急車の音が鳴ると、緊急車両という形で表示されるアプリ」
 
新しいアプリを開発して、緊急事態を知らせる音の種類を識別し、命を守るための音の情報を届けようというのです。
岡大 片岡医師09-1
さらにこの日、東京で片岡さんが向かったのは…。

(参議院議員 今井絵理子さん)
「失礼します」

沖縄出身のアイドルグループ、SPEEDのメンバーで、参議院議員の今井絵理子さんです。
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今井さんの長男は、生まれた時から聴覚に障害があり、今井さんは、子育てをしながら手話を覚え、障害者施設などでボランティア活動を続けてきました。
岡大 片岡医師11
彼女の秘書も聴覚障害者。国会議員として、国会で初めて手話を交えて質問した他、防災や障害者支援などの施策にも力を入れています。
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(参議院議員 今井絵理子さん)
「聴覚障害者に対しての災害時情報伝達手段というのがまだまだ研究・開発が進んでいない現状があった。何かできないかと、それで片岡さんが研究しているということで」
岡大 片岡医師13
そんな今井さんに、片岡さんは新しい機器の開発について説明する機会を得たのです。
片岡医師14
(岡山大学病院耳鼻咽喉科 片岡祐子医師)
「避難所など含めて、支援してもらう情報のやり取りは、どうしても音声を使ってのコミュニケーションがメインになるので、なかなか難しい。これを何とか聴覚障害者が乗り遅れないようにしようと、プロジェクトを作っている」
 
(参議院議員 今井絵理子さん)
「本当にうれしい。なかなか光の当たらない分野、障害者福祉の関係って。そこにスポットライト当てることは、実は障害の無い人にも恩恵があると思っている」
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片岡さんが完成を目指す3年後の2025年には、世界中の聴覚障害のあるアスリートが集う「デフリンピック」が、日本で開催されます。
岡大 片岡医師17
(岡山大学病院耳鼻咽喉科 片岡祐子医師)
「これからやっていくことは、一つの発信であり挑戦。それでも可能性は秘めている。ぜひ前向きに取り組みたい」
岡大 片岡医師18
障害の有無に関わらず、安心して暮らせる社会を実現するための取り組みが進んでいます。