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2023.11.03

19歳聴覚障害者の走高跳選手 世界を目指す道のりを地元企業がサポート【手話が語る福祉 岡山】

手話が語る福祉のコーナーです。走高跳で活躍する、ろう者のアスリートが岡山市の企業に所属しています。世界の舞台を目指すその道のりには、職場のサポートがありました。

佐藤秀祐さん(19)。2023年、岡山市の平林金属に入社したデフアスリートです。10月に鹿児島で行われた全国障害者スポーツ大会に岡山市選手団として出場し、走高跳で連覇を果たしました。2年後に開催予定のデフリンピックなど、国際大会に向けた強化指定選手にも選ばれています。

岡山ろう学校の中学部2年の時、体育の授業がきっかけで走高跳を始めました。

(佐藤秀祐さん)
「初めて跳べたときはめっちゃ気持ちよかった。それで先生から勧められて本格的に始めた」

高等部3年の時には、岡山県障害者スポーツ大会で自己ベストの183センチを記録し優勝するなど、頭角を現します。

(江藤裕太コーチ)
「まず体が強い、バネもある。意思疎通には少し時間がかかるが、言ったことをすぐに体現することができるのが強み」

そんな佐藤さんをサポートしようと、会社が動きました。

(平林金属 平林実社長)
「本当はやりたいけれど、自分たちは社会人になって競技を続けることはないです、という感じだった。『サポートするからやるか』と話し合い、その日に陸上部を作ることになった」

平林金属では、佐藤さんの他にも様々な障害がある人が働いていますが、業務内容はほぼ変わりません。困難なことがあれば社員同士でサポート。佐藤さんが聞き逃した部分は、同期や手話ができる同僚が支えます。

(平林金属 平林実社長)
「耳に障害があるからということは全くなく、やる気があればなにか可能性があるのではないか、ということしか考えていなかった。得意なところがそれぞれ違うだけで、世の中が少し見方を変えると、人出不足などが言われるが人はたくさんいる。その中で会社ではこういったことが 用意できるというのは日々取り組んでいる」

佐藤さんが働く工場には、同じ障害がある先輩がいます。8年先輩の高村隆之介さん。高村さんは平林金属の軟式野球部のピッチャーで、聞こえる人のチームでプレーしています。

(高村隆之介さん)
「佐藤君は同じアスリートとしてスポーツも仕事も頑張っているし、見ていると自分も負けたくないという気持ちが高まる」

競技は違っても、同じアスリートとして一緒にトレーニングに励む2人。平林金属はこうしたトレーニング施設も社員に開放しています。

(佐藤秀祐さん)
「最高!いっぱいマシンがあるしとてもいい。空いた日は2人と一緒に。心強い、一緒にトレーニングをしたり、耳が聞こえない同士落ち着く」

(高村隆之介さん)
「体幹が弱いので、体幹を強くする。食事も大事だと伝えている」

(佐藤秀祐さん)
「びしびし教えてくれます(笑)」

より高いレベルを目指そうと、障害者の大会だけでなく、一般の大会にも出場している佐藤さん。

(佐藤秀祐さん)
「走高跳の競技には、耳が聞こえなくてもあまり違いはないが、放送が聞こえなかったり、速報アナウンスも全部分からない。いつも友達に呼ばれたら教えてと助けてもらっている」

それでも挑戦し続ける佐藤さん、10月に岡山市で行われた大会でも、自己ベストにせまる180センチを跳びました。前回のデフリンピックの派遣標準記録の195センチまであと1歩です。

(佐藤秀祐さん)
「一番の目標は、2025年の東京デフリンピックに出場して金メダルを取ることです」

「HIRAKIN」のロゴを胸に、世界の舞台を目指します。佐藤さんは11月3日から東京で始まったデフ陸上の日本選手権大会にも出場します。活躍に期待です。