2023.11.21
【記者解説】ハンセン病元患者家族への補償金請求期限まで残り1年も…偏見・差別で名乗れない現状【岡山】
ハンセン病元患者の家族に対する補償金の請求期限まで11月21日で、ちょうど1年。元患者と同じく偏見や差別にさらされ、名乗り出られない家族が多いのが現状です。瀬戸内市の療養所で働くソーシャルワーカーに家族の今を聞きました。
(邑久光明園ソーシャルワーカー 坂手悦子さん)
「郵便局、用事はない?ない。ないか。リハビリ終わった?ええ。終わった?」
瀬戸内市の国立ハンセン病療養所、邑久光明園で働くソーシャルワーカー、坂手悦子さん。請求期限が2024年に迫った補償金の支払いについて、元患者と家族の間に立ち奔走しています。
*尼崎市の講演会にて
「入所者には、自分たちのことを理解しようとする人がいる安心感の中で過ごしてほしいと思っている」
「生きていて良かったと思ってもらうために、私たちに何ができるか」
坂手さんは社会に根強く残る偏見や差別を解消したいと、理解を深める講演活動にも力を入れています。
■ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律
2019年11月22日に施行されたハンセン病元患者の家族補償法に基づき、家族には最大180万円の補償金が支払われることになりました。しかし、請求期限まで1年となった今も、補償金を受け取った家族は国の想定の3分の1ほどにとどまっています。
(邑久光明園ソーシャルワーカー 坂手悦子さん)
「邑久光明園から連絡があったら困るとか、ハンセン病の療養所のやりとり記録さえ、残したくない人たち、自分の子供に隠している人は、電話する時間さえ見つけることができない。そういう人たちは補償のことを知っていても、なかなか請求することができない」
元患者家族であることを周りに知られるのを恐れ、家族の多くは名乗り出られないのです。東北地方の60歳の男性は、亡くなった父親が元患者でした。
(元患者家族)
「突然、同級生の男の子から“どすの子”って言われたのが初めて。(方言で)“ハンセン病の子供”という意味」
「真冬の寒い時に、氷の張った池に、ランドセル、服のまま放り込まれた経験もある」
今でも、娘の夫の両親には、知らせていません。
九州に住む女性は。
(元患者家族・50代)
「父がハンセン病の回復者。すでに私は生まれた時から人権がなかった。人権のないところで生きていくしかなかった」
「ここまでするのかと思ったことが、ペットとして飼っていた白い犬がいたが、家族がいない間にいなくなっていた。探したら、真っ白い犬が真っ赤になるくらい棒でたたかれて殺されていた」
女性の姉は、父親のことが原因で結婚が破談になりました。それでも、女性が姉にハンセン病の啓発活動を進めていきたいと訴えると…。
(元患者家族・50代)
「姉からも“やらないでほしい”、“九州から出ていってくれないか”と。それを言われて一言も返せない」
■会議をするソーシャルワーカーたち
「最近はおいっこさんとか、ちょっと関係が遠い人が増えた気がする。同居を証明しないといけないパターンがちょっと増えている」
坂手さんたち、邑久光明園のソーシャルワーカーは、家族に補償金請求の案内をする日々が続いています。
(邑久光明園ソーシャルワーカー 坂手悦子さん)
「そういう、人生に対しての補償金にしては少な過ぎると思う。だけどやっぱり、受けられるものは受けてほしい」
「決して十分な金額ではないとしても、補償を受けることで (入所者に)ありがとうねと思える。つながりがこれまで以上につながっていけばいい」
■記者解説
ここからは取材にあたった竹下さんとお伝えします。
Q、元患者の家族として名乗り出れない人が多いということですが、それだけ差別や偏見が根付いているということなのでしょうか?
(竹下美保記者)
「国の誤った隔離政策に関わる法律が制定されたのは今から100年以上前の1907年。1931年に改正され「らい予防法」に。その法律が撤廃されたのは平成の時代・1996年。隔離政策は実に約90年及びました」
Q:家族への補償金というのはどういった内容なのでしょうか?
(竹下美保記者)
「法律が制定されたのは2019年です。元患者家族らが起こした国家賠償請求訴訟で原告が勝訴。この判決を受けて11月22日に、「補償金の支給等に関する法律」が施行されました。配偶者や親子関係には一人あたり180万円などとなっていて施行後5年が申請期限ですが実際に支払われることになったのは7931件、国の想定の3分の1に留まっています」
Q、ハンセン病問題には多くの課題が残されていますね
(竹下美保記者)
「元患者の家族の皆さんが、堂々と名乗り出られる社会が必要です。取材の中である家族の方が、「できるだけ多くの当事者にあってほしい、そうすれば、偏見や誤解は必ず解けるから」とおっしゃっていたのが印象的でした。あなたの近くの大切な人も、声を上げられずつらい思いをしている人がいるかもしれません。そう思って、意識を変えていくことは、きっと私たちにもできるはずです」
(邑久光明園ソーシャルワーカー 坂手悦子さん)
「郵便局、用事はない?ない。ないか。リハビリ終わった?ええ。終わった?」
瀬戸内市の国立ハンセン病療養所、邑久光明園で働くソーシャルワーカー、坂手悦子さん。請求期限が2024年に迫った補償金の支払いについて、元患者と家族の間に立ち奔走しています。
*尼崎市の講演会にて
「入所者には、自分たちのことを理解しようとする人がいる安心感の中で過ごしてほしいと思っている」
「生きていて良かったと思ってもらうために、私たちに何ができるか」
坂手さんは社会に根強く残る偏見や差別を解消したいと、理解を深める講演活動にも力を入れています。
■ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律
2019年11月22日に施行されたハンセン病元患者の家族補償法に基づき、家族には最大180万円の補償金が支払われることになりました。しかし、請求期限まで1年となった今も、補償金を受け取った家族は国の想定の3分の1ほどにとどまっています。
(邑久光明園ソーシャルワーカー 坂手悦子さん)
「邑久光明園から連絡があったら困るとか、ハンセン病の療養所のやりとり記録さえ、残したくない人たち、自分の子供に隠している人は、電話する時間さえ見つけることができない。そういう人たちは補償のことを知っていても、なかなか請求することができない」
元患者家族であることを周りに知られるのを恐れ、家族の多くは名乗り出られないのです。東北地方の60歳の男性は、亡くなった父親が元患者でした。
(元患者家族)
「突然、同級生の男の子から“どすの子”って言われたのが初めて。(方言で)“ハンセン病の子供”という意味」
「真冬の寒い時に、氷の張った池に、ランドセル、服のまま放り込まれた経験もある」
今でも、娘の夫の両親には、知らせていません。
九州に住む女性は。
(元患者家族・50代)
「父がハンセン病の回復者。すでに私は生まれた時から人権がなかった。人権のないところで生きていくしかなかった」
「ここまでするのかと思ったことが、ペットとして飼っていた白い犬がいたが、家族がいない間にいなくなっていた。探したら、真っ白い犬が真っ赤になるくらい棒でたたかれて殺されていた」
女性の姉は、父親のことが原因で結婚が破談になりました。それでも、女性が姉にハンセン病の啓発活動を進めていきたいと訴えると…。
(元患者家族・50代)
「姉からも“やらないでほしい”、“九州から出ていってくれないか”と。それを言われて一言も返せない」
■会議をするソーシャルワーカーたち
「最近はおいっこさんとか、ちょっと関係が遠い人が増えた気がする。同居を証明しないといけないパターンがちょっと増えている」
坂手さんたち、邑久光明園のソーシャルワーカーは、家族に補償金請求の案内をする日々が続いています。
(邑久光明園ソーシャルワーカー 坂手悦子さん)
「そういう、人生に対しての補償金にしては少な過ぎると思う。だけどやっぱり、受けられるものは受けてほしい」
「決して十分な金額ではないとしても、補償を受けることで (入所者に)ありがとうねと思える。つながりがこれまで以上につながっていけばいい」
■記者解説
ここからは取材にあたった竹下さんとお伝えします。
Q、元患者の家族として名乗り出れない人が多いということですが、それだけ差別や偏見が根付いているということなのでしょうか?
(竹下美保記者)
「国の誤った隔離政策に関わる法律が制定されたのは今から100年以上前の1907年。1931年に改正され「らい予防法」に。その法律が撤廃されたのは平成の時代・1996年。隔離政策は実に約90年及びました」
Q:家族への補償金というのはどういった内容なのでしょうか?
(竹下美保記者)
「法律が制定されたのは2019年です。元患者家族らが起こした国家賠償請求訴訟で原告が勝訴。この判決を受けて11月22日に、「補償金の支給等に関する法律」が施行されました。配偶者や親子関係には一人あたり180万円などとなっていて施行後5年が申請期限ですが実際に支払われることになったのは7931件、国の想定の3分の1に留まっています」
Q、ハンセン病問題には多くの課題が残されていますね
(竹下美保記者)
「元患者の家族の皆さんが、堂々と名乗り出られる社会が必要です。取材の中である家族の方が、「できるだけ多くの当事者にあってほしい、そうすれば、偏見や誤解は必ず解けるから」とおっしゃっていたのが印象的でした。あなたの近くの大切な人も、声を上げられずつらい思いをしている人がいるかもしれません。そう思って、意識を変えていくことは、きっと私たちにもできるはずです」