2021.11.09
手話が語る福祉 失明しても本が読める~読書のバリアフリー化~【岡山・香川】
手話が語る福祉のコーナーです。
読書の秋という言葉がありますが、視覚障害者も読書を楽しめることをご存知でしょうか。
岡山県でも取り組みが進む、読書のバリアフリー化を取材しました。 (小説の録音図書を聞く様子)
「しっかりと育ち続ける遺伝子の母樹からは、やがて高級木材になる幹がまっすぐに伸びた北山杉が育った」 パソコンのスピーカーから出る音声を熱心に聞くのは、岡山市の平尾史法さん(67)。
(平尾史法さん)
「文字を追う方が頭に入りやすいが、見えないので、読書というより“聞く書”です」
聞いていたのは、小説などをボランティアが読み上げた録音図書。
(平尾史法さん)
「1人で過ごしているが、この録音図書がなければ、1日が過ぎない。今は、読書が生きがいです」 こうした録音図書の制作や貸し出しにあたっているのが、岡山県視覚障害者センターです。 点字図書の制作や対面での読み上げボランティアも行っていますが、自宅で聞ける録音図書は、昔から人気があるといいます。
(岡山県視覚障害者センター 二階堂和美さん案内)
「こちらが録音したものの書庫です」
(篠田吉央キャスター)
「昔からのが全てあるんですね。これはテープの時代のものですか。 (篠田吉央キャスター)
「へ~、色んなものがあるんですね。これ“ゼロの焦点”松本清張さんの小説ですよね。」 (篠田吉央キャスター)
「こちらには“ノストラダムスの大予言”もありますね」 (岡山県視覚障害者センター 二階堂和美さん案内)
「はやりましたからね」
現在、CD化を進めている録音図書。
少しでも多くの作品を提供出来ればと、全国のセンターが連携し、録音する作品が重複しないようにしています。
聞きたい本があれば、所有するセンターから借りられる仕組みで、この日も、岡山で制作したものを北海道や神奈川県に発送しました。
(岡山県視覚障害者センター 二階堂和美さん)
「北海道からも沖縄からもリクエストが来ますし、私たちも北海道からも沖縄からもお借りします」 また、2010年からは、全国の録音データをインターネット上で聞いたりダウンロードしたりできる「サピエ図書館」の運用が始まり、 今では、小説だけでなく、雑誌や料理のレシピ集など、約12万タイトルが登録されています。
(スポーツ雑誌の読み上げ音声)
「近鉄イコールいてまえ打線、オリックスと合併する4年までナインを鼓舞し続けた」
(料理のレシピ集の読み上げ音声)
「カイワレ大根をざくざく切ってのせ、好みでしょうゆかポン酢をさっとかけるだけ」 (篠田吉央キャスター)
「音訳活動は、地域住民のボランティアによって成り立っています。今こちらでは勉強会が開かれています」 録音図書を担当する県内のボランティアは、センターが開催する養成講座を受けますが、その後も、定期的に集まり、読み方のポイントなどをアドバイスし合っています。
(ボランティアによる小説の読み上げ)
「半年前よりは少しばかり知恵がつき、しっかりしてきた。今となっては」
(他のボランティアによるアドバイス)
「(読みが)速くなってきた。もうちょっと間を取ったほうがいい」 特に心掛けるのは、淡々と読むこと。感情を込めて読む朗読とは違います。
(録音図書を担当するボランティア)
「利用者の方が本を読むようにしてもらいたい。私たちが読むのではない。私たちは伝えるだけですから」 「みんなが同じように、きちんと情報を受け取れる状況が出来たらいい」
「晴眼者が図書館に行って好きな本を選べるように、もっと(録音図書の)利用者が同じような状態で、自分の読みたい本が選べる状態になれば一番いい」
岡山市南区に住む辻田峯夫(74)さんは、早期退職を機にボランティアを始めました。
(篠田吉央キャスター)
「録音量のマイクが天井からつり下げられていますが、手作りですか?」
(辻田峯夫さん)
「手作りですね。孫の靴下をノイズ除けにつけた。」 (辻田峯夫さん)
「(マイクと)ちょうど大きさが合うので」
録音だけでなく、パソコンを使った編集までボランティアが行いますが、高齢化が進み年々担い手は減っています。
(辻田峯夫さん)
「こればっかりは 生きがいとしてやるようなものではない。ちゃんと読めなくなったら やめなくてはいけない。」 (辻田峯夫さん)
「どこかで自分で見切りをつけるべきだと思っているが、そうすると、どんどんやる人は少なくなってくる」
こうした中、岡山放送のアナウンサーも視覚障害者の読書に貢献できればと、2021年4月から、毎月3人が生活情報紙や絵本の録音に取り組んでいて、県視覚障害者センターでCD化され、貸し出されています。 また、岡山県教育委員会も、2022年度からボランティアの人材確保や貸し出しサービスの周知を進めます。
国が2019年6月に施行した読書バリアフリー法を受けたもので、現在、4年間にわたる県読書バリアフリー計画の作成にあたっています。 (岡山県教育委員会 生涯学習課 栗原宏之課長)
「障害のある方もない方も一緒に生活する中で当然、読書も権利として活用できるのは大事な視点だと思う」 録音図書を日々利用する岡山市の平尾さんは、こうした県教委の動きに期待を寄せています。
(平尾史法さん)
「読みたいけど読めない。読書を諦めている人がいるなら、その人たちに情報が届くようにして欲しい」 視覚に障害があっても「本が読める」録音図書。1人でも多くの人に届き、活用されることが望まれます。
(篠田吉央キャスター)
「誰一人 取り残されないこと 願っています」
読書の秋という言葉がありますが、視覚障害者も読書を楽しめることをご存知でしょうか。
岡山県でも取り組みが進む、読書のバリアフリー化を取材しました。 (小説の録音図書を聞く様子)
「しっかりと育ち続ける遺伝子の母樹からは、やがて高級木材になる幹がまっすぐに伸びた北山杉が育った」 パソコンのスピーカーから出る音声を熱心に聞くのは、岡山市の平尾史法さん(67)。
生まれつき弱視で、30年程前に失明しました。
(平尾史法さん)
「文字を追う方が頭に入りやすいが、見えないので、読書というより“聞く書”です」
現在は、1日に2つほどの作品を聞くといいます。
(平尾史法さん)
「1人で過ごしているが、この録音図書がなければ、1日が過ぎない。今は、読書が生きがいです」 こうした録音図書の制作や貸し出しにあたっているのが、岡山県視覚障害者センターです。 点字図書の制作や対面での読み上げボランティアも行っていますが、自宅で聞ける録音図書は、昔から人気があるといいます。
(岡山県視覚障害者センター 二階堂和美さん案内)
「こちらが録音したものの書庫です」
「昔からのが全てあるんですね。これはテープの時代のものですか。 (篠田吉央キャスター)
「へ~、色んなものがあるんですね。これ“ゼロの焦点”松本清張さんの小説ですよね。」 (篠田吉央キャスター)
「こちらには“ノストラダムスの大予言”もありますね」 (岡山県視覚障害者センター 二階堂和美さん案内)
「はやりましたからね」
現在、CD化を進めている録音図書。
少しでも多くの作品を提供出来ればと、全国のセンターが連携し、録音する作品が重複しないようにしています。
「北海道からも沖縄からもリクエストが来ますし、私たちも北海道からも沖縄からもお借りします」 また、2010年からは、全国の録音データをインターネット上で聞いたりダウンロードしたりできる「サピエ図書館」の運用が始まり、 今では、小説だけでなく、雑誌や料理のレシピ集など、約12万タイトルが登録されています。
(スポーツ雑誌の読み上げ音声)
「近鉄イコールいてまえ打線、オリックスと合併する4年までナインを鼓舞し続けた」
(料理のレシピ集の読み上げ音声)
「カイワレ大根をざくざく切ってのせ、好みでしょうゆかポン酢をさっとかけるだけ」 (篠田吉央キャスター)
「音訳活動は、地域住民のボランティアによって成り立っています。今こちらでは勉強会が開かれています」 録音図書を担当する県内のボランティアは、センターが開催する養成講座を受けますが、その後も、定期的に集まり、読み方のポイントなどをアドバイスし合っています。
(ボランティアによる小説の読み上げ)
「半年前よりは少しばかり知恵がつき、しっかりしてきた。今となっては」
(他のボランティアによるアドバイス)
「(読みが)速くなってきた。もうちょっと間を取ったほうがいい」 特に心掛けるのは、淡々と読むこと。感情を込めて読む朗読とは違います。
(録音図書を担当するボランティア)
「利用者の方が本を読むようにしてもらいたい。私たちが読むのではない。私たちは伝えるだけですから」 「みんなが同じように、きちんと情報を受け取れる状況が出来たらいい」
「録音量のマイクが天井からつり下げられていますが、手作りですか?」
(辻田峯夫さん)
「手作りですね。孫の靴下をノイズ除けにつけた。」 (辻田峯夫さん)
「(マイクと)ちょうど大きさが合うので」
録音だけでなく、パソコンを使った編集までボランティアが行いますが、高齢化が進み年々担い手は減っています。
(辻田峯夫さん)
「こればっかりは 生きがいとしてやるようなものではない。ちゃんと読めなくなったら やめなくてはいけない。」 (辻田峯夫さん)
「どこかで自分で見切りをつけるべきだと思っているが、そうすると、どんどんやる人は少なくなってくる」
こうした中、岡山放送のアナウンサーも視覚障害者の読書に貢献できればと、2021年4月から、毎月3人が生活情報紙や絵本の録音に取り組んでいて、県視覚障害者センターでCD化され、貸し出されています。 また、岡山県教育委員会も、2022年度からボランティアの人材確保や貸し出しサービスの周知を進めます。
国が2019年6月に施行した読書バリアフリー法を受けたもので、現在、4年間にわたる県読書バリアフリー計画の作成にあたっています。 (岡山県教育委員会 生涯学習課 栗原宏之課長)
「障害のある方もない方も一緒に生活する中で当然、読書も権利として活用できるのは大事な視点だと思う」 録音図書を日々利用する岡山市の平尾さんは、こうした県教委の動きに期待を寄せています。
(平尾史法さん)
「読みたいけど読めない。読書を諦めている人がいるなら、その人たちに情報が届くようにして欲しい」 視覚に障害があっても「本が読める」録音図書。1人でも多くの人に届き、活用されることが望まれます。
(篠田吉央キャスター)
「誰一人 取り残されないこと 願っています」