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1834人の「解剖録」の存在明らかに…ハンセン病療養所25年間の記録【岡山・瀬戸内市】

2022.09.02

1834人の「解剖録」の存在明らかに…ハンセン病療養所25年間の記録【岡山・瀬戸内市】

瀬戸内市の国立ハンセン病療養所、長島愛生園に残っていた入所者の遺体の解剖録の内容が、2022年9月、初めて遺族に開示されました。1年前に存在が確認された「解剖録」。当時の記事を再びお伝えします。(以下の記事の日時は2021年4月1日時点となります)


ハンセン病患者を強制的に隔離してきた「らい予防法」の廃止から2021年4月1日で25年です。瀬戸内市の国立ハンセン病療養所で入所者の遺体を解剖していたことを示す「解剖録」の存在が明らかになりました。

ハンセン病患者を強制的に隔離する誤った国の政策「らい予防法」は、25年前の1日撤廃されました。
1はんせん
ハンセン病療養所の長島愛生園に入所して約70年、中尾伸二さんです。

(長島愛生園入所者自治会 中尾伸二会長)
「解放されたやっとと、うれしかった。少しずつ理解されてきたが遅すぎたなあ」

中尾さんは、2021年、初めて、園に残されていた「解剖録」の存在を知りました。

(長島愛生園入所者自治会 中尾伸二会長)
「あれだけたくさんのものが丁寧に残っていたというのは、まずびっくりした」
3はんせん
(長島愛生園 山本典良園長)
「これが解剖録ですね。1人の患者に対して4・5ページの記載があります」

今回見つかった32冊の「解剖録」は、施設の増築の際に廃棄されるはずでしたが、非常勤の男性医師が10年以上大切に保管していたのです。
「解剖録」には、開園翌年の1931年以降、25年間で亡くなった入所者のうち、8割にあたる1834人の記録が残されていました。
ハンセン病
(長島愛生園 山本典良園長)
「カルテの保存期間5年なので、法律上、5年以上残す必要はない。少なくともこの時代のものは残しておく必要はない」

医師や患者、家族以外に見せることはできませんが、山本園長は「解剖録」の存在を公表することにしました。

ハンセン病は直接死につながる病気ではないため、死因が何だったのか、治療法は正しかったかなど、検証された様子が伺えると言います。

(長島愛生園 山本典良園長)
「承諾に関しては”?”(クエスチョンマーク)付くこともあるんですが、結果に重点を置きたい。結果として、これが残っている。これが全てだと思う」

偏見に苦しむ患者のために…。同じ医師として、山本園長は特別な思いを受け取ったのです。

(長島愛生園 山本典良園長)
「医者であれば、たぶんこれを見た時点で捨てるという選択肢はない。そのぐらい当時の医者の思いが詰まっていると感じた」

親族がどのように亡くなったか知りたいと、2021年1月、遺族が「解剖録」を見せてほしいと訪れたこともあったそうです。

(長島愛生園 山本典良園長)
「当時の医者と患者がどういう思いで残したかが分かる。だから残していきたい」
2はんせん
「解剖録」には、ハンセン病患者の生きた証と、私たちに贈られた大切なメッセージが込められているのです。